過払い金請求について

 ここでは、過払い金請求についてのご質問と回答をまとめました。ここでは主として過払い金請求について法律上の主張に対する対策を解説します。平成20年前後から過払い金請求について生じている問題点を主として解説します。

Q 相手の会社が倒産しているという情報があるのですが、過払い金請求はできますか。

A 過払い金請求ができる場合と過払い金請求ができない場合があります。
 既に業者が破産等の理由により法律的に消滅してしまっている場合、残念ながら、過払い金請求はできません。
 業者は存在しているが業務をしているかどうかわからない場合、業者が法律的に存在している限りは過払い金請求ができる可能性があります。
 相手の会社が破産申立中・民事再生申立中等の場合には、過払い金請求についても倒産法全体の中で色々な扱いをされていることがあります。
 相手の会社が倒産しているかどうかは、過払い金請求を多く取り扱っている弁護士等の法律の専門家にご相談下さい。


Q 自分で過払い金請求をしたところ、相手の業者から、過払い金請求権は時効だと言われましたが?

A 過払い金請求と時効については色々な論点があります。ここでは、過払い金請求権と時効についての反論案の目次を以下記載します。過払い金請求と時効についての詳細は弁護士等の専門家にご相談下さい。

第1 消滅時効の制度趣旨から取引の継続中は時効進行しない          
 1 時効制度の趣旨                                                 
 2 過払い金返還請求権の性質                                           
 (1)違法無効な制限超過貸付けによって発生する債権                 
 (2)保護すべき事実状態でないこと                                 
 (3)貸金業者には帳簿の保存義務があり立証の困難はない             
 (4)借主は権利の上に眠らされた者であり、眠る者ではない            
 3 過払い金請求権に時効無し                                                
第2 最高裁判所判決が判示する消滅時効の起算点 
 1 権利の性質上、権利の行使が現実に期待できる時点が起算点   
 (1)消滅時効に関する一連の最高裁判決の鳥瞰-現実的権利行使期待時 
 (2)最高裁判所大法廷昭和45年7月15日判決                   
  (ア)事案と判示内容                                               
  (イ)昭和45年判決の評価                                       
 (3)最高裁判所第三小法廷平成8年3月5日判決                     
  (ア)事案と判示内容                                            
  (イ)平成8年判決の評価                                           
 (4)過払い金返還請求権の性質-権利の行使を現実に期待できる時期は取引終了時  
  (ア)困難なみなし弁済規定の解釈・適用                         
  (イ)困難な取引履歴の再現と複雑な引直計算                          
  (ウ)変動して確定しない過払金返還請求権の額                   
  (エ)過払い金返還請求権の性質のまとめ                           
  (オ)過払い金返還請求権の権利行使が可能となる時点は取引の終了時点    
  (カ)最終取引日を過払金返還請求権の消滅時効の起算点とする下級審判決
 2 客観的状況等に照らし、権利の行使が現実に期待できない特段の事情が失われた時点が起算点                                      
 (1)最高裁判所第一小法廷平成15年12月11日判決の事案と判示内容 
 (2)平成15年判決の評価-「客観的状況等の特段の事情がある場合」 
 (3)過払い金債権の権利行使は、貸付取引が継続している限り、客観的状況等に照らし、現実に期待できない特段の事情が存在する
 3 権利が変動している間は消滅時効は進行しない              
 (1)最高裁第三小法廷平成6年2月22日判決                       
 (2)平成6年判決の評価-損害が確定しないうちは消滅時効は進行しない 
 (3)過払い金債権は、変動を繰り返し取引が終了した時点で権利が確定する 
 (4)権利が確定する最終取引日を消滅時効の起算点とする下級審判決    
 4 契約を継続する自由を制約する結果を招来させる消滅時効の進行は認められない  
 (1)最高裁判所第三小法廷平成19年4月24日判決、同第一小法廷平成19年6月7日判決                                 
 (2)平成19年各判決の評価-債権者の自由にゆだねられている行為を事実上行うよう求めることはできない                           
 (3)基本契約を締結した貸付取引では取引が継続することが合意内容
 (4)自由にゆだねられる行為を要求する結果となることから、基本契約継続中に消滅時効は進行しないとした下級審判決           
 5 最高裁の消滅時効に関する基本原則                          
 6 本件へのあてはめ                                          
第3 過払金の確定日(取引終了時)を、消滅時効の起算点とした高等裁判所判決
 1 過払金の消滅時効の起算点を最終取引日とする高等裁判所判決の骨子 
 2 高等裁判所判決の抜粋                                              
 (1)東京高判平成19年7月19日(CFJの上告不受理・確定)〔対CFJ (2)名古屋高判平成19年10月31日(確定)〔対プロミス〕          
 (3)東京高判平成19年12月13日(東日本信販上告)〔対東日本信販〕
 (4)名古屋高判民事第3部平成19年12月19日(確定)〔対アコム〕  
 (5)東京高判平成20年1月30日(確定)〔対三和ファイナンス〕 
 (6)名古屋高判平成20年2月27日(確定)〔対プロミス〕
 (7)名古屋高判平成20年2月28日(確定)〔対プロミス〕            
 (8)広島高判岡山支部平成20年3月14日(確定)〔対レタスカード〕  
 (9)大阪高判平成20年3月28日(確定)〔対CFJ〕
(10)大阪高判平成20年4月15日(確定)〔対アコム〕
(11)大阪高判平成20年4月18日(プロミス上告)〔対プロミス〕      
(12)広島高判平成20年6月26日(確定)〔対プロミス〕
(13)東京高判平成20年8月27日(確定)〔対三和ファイナンス〕      
第4 消滅時効援用は権利の濫用 4                           
 1 最高裁判所第三小法廷平成19年2月6日判決の内容               
 2 平成19年判決の評価-帰責性のある債務者の消滅時効の援用は権利の濫用                              
 3 過払金返還請求権へのあてはめ                                   
 (1)具体的権利の取得                                           
 (2)債務者の妨害行為                                              
 (3)権利行使が困難となったこと                                 
 (4)権利行使を合理的に期待できた事情がないこと                    
 4 過払金返還請求権の消滅時効の援用は権利の濫用                   
 5 過払金返還請求に対する消滅時効の援用を権利の濫用とした判決     
第5 結論  

Q 取引終了時から10年以上経過していますが、過払い金請求はできますか。

A 過払い金請求権は原則として取引終了から10年で時効となります。そのため、取引終了時から10年以上経過した場合、過払い金請求ができなくなる可能性が相当程度あります。完済した業者に対する過払い金請求を検討してい方はなるべく早急の手続きをお勧めします。
 なお、取引終了時から10年以上経過した場合、不法行為を理由として別途過払い金請求をすることが可能な場合がありえます。以下においては、取引終了後10年以上経過した場合の過払い金請求の方法の参考の主張を記載します。(ただし、取引終了後10年以上経過した過払い金請求には法的な問題点が多数ありますので、詳細は弁護士等の法律の専門家にご相談ください。)

(参考の主張例)

第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金~円及びこれに対する平成~年~月~日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決及び請求の趣旨第1項について仮執行の宣言を求める。

第2 請求の原因
1 原告と被告との取引関係
(1)原告は被告との間において、昭和~年~月~日から平成~年~月~日まで、別紙計算書の取引を継続した。(以下「本件取引」という。)
(2)原告と被告との間で締結された金銭消費貸借契約の利率は不詳であるが、利息制限法第1条所定の利率を越えることは明らかである。そこで、これを同法所定利率で元利充当計算を行ったところ、別紙計算書記載の金額の過払い金が発生する。
  
2 原告・被告間の取引が不法行為となる根拠
(1)貸金業法の施行時期を根拠とする不法行為
(神戸地方裁判所平成19年(レ)第31号・平成19年11月13日判決・名古屋高等裁判所平成19年(ネ)第1048号・平成20年2月27判決参照)
(ア)貸金業法が施行されたのは昭和58年11月1日である。
(イ)本件取引開始時(昭和~年~月~日)には貸金業法は未だ施行されていなかった。
(ウ)貸金業法附則第6条第1項は、貸金業者がこの法律の施行前に業として行った金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、この法律の施行後に、債務者が利息として金銭を支払ったときは、当該支払については、貸金業法第43条第1項及び第2項の規定(みなし弁済の規定)は適用されないとしている。
(エ)そのため、本件取引に貸金業法が適用される余地はない。
(オ)したがって、本件取引において、超過利息の支払が貸金業法により有効な債務の弁済とみなされる余地は全くなかった。
(カ)にもかかわらず、本件取引では利息制限法の利率を超える利息の支払いが実際になされている。
(キ)とすれば、被告は本件取引においては、利息制限法超過利息が支払われても、それを利息制限法所定の利率に引き直して債権管理を行うべきであったといわざるをえない。
(ク)被告が利息制限法超過利息分を請求する行為・過払い金となる弁済金を受領する行為は、原告の無知に乗じ、適法に保持し得ない金員を収受するものというべきであり、社会的相当性を欠く違法な行為である。
(ケ)したがって、被告が、利息制限法超過利息分を請求する行為・過払い金となる弁済金を受領する行為は不法行為となる。

(2)架空請求の不法行為
(札幌高等裁判所平成18年(ネ)第303号・平成19年3月8日判決、大阪高等裁判所平成19年(ネ)第676号・平成19年7月31日判決参照)
(ア)原告・被告間の本件取引の開始時期が貸金業法施行前・貸金業法施行後のいずれであっても、被告の行為は不法行為となる。
(イ)被告は、本件取引において過払い金が発生した時点において、原告からの金銭の受領が法律上の原因を欠く金員の受領であることを知っていた。(または知るべきであった。)
(ウ)にもかかわらず、本件取引では利息制限法の利率を超える利息の支払いが実際になされている。
(エ)とすれば、被告は本件取引においては、利息制限法超過利息が支払われても、それを利息制限法所定の利率に引き直して債権管理を行うべきであったといわざるをえない。
(オ)被告が利息制限法超過利息分を請求する行為・過払い金となる弁済金を受領する行為は、原告の無知に乗じ、適法に保持し得ない金員を収受するものというべきであり、社会的相当性を欠く違法な行為である。
(カ)したがって、被告が、利息制限法超過利息分を請求する行為・過払い金となる弁済金を受領する行為は貸金業法の施行時期と本件取引の開始時期の前後関係を問わず不法行為となる。

(3)告知義務(説明義務)違反の不法行為
(神戸地方裁判所平成19年(ワ)第2380号・平成20年5月1日判決参照)
(ア)原告が被告に対して法的に不要な支払を行うことは原告の財産的利益を損なう行為である。
(イ)被告は、本件取引において過払い金が発生した時点において、原告からの金銭の受領が法律上の原因を欠く金員の受領であることを知っていた。(または知るべきであった。)
(ウ)このような場合、被告に法律上保持が正当視されない金員を累積させていくことを漫然と座視し続けることなく、原告に当該支払が法律上不必要であることを告知する義務が被告にはある。
(エ)にもかかわらず、被告が告知を行わず、漫然と原告からの支払を受け続けていたことは、違法な不作為を行い、原告の財産的な利益を侵害したものとして不法行為となる。
(オ)なお、上記告知義務違反(説明義務違反)の主張は、本件取引開始時期が貸金業法施行前・貸金業法施行後のいずれであっても該当する。被告が、本件取引において過払い金が発生した時点において、原告からの金銭の受領が法律上の原因を欠く金員の受領であることを知っていた(または知るべきであった)ことは、取引開始時期が貸金業法施行前・施行後のいずれであっても同様と考えられるからである。
   
3 不法行為構成における消滅時効・除斥期間について
(1)原告が損害及び加害者を知ったのは、原告が原告代理人の法律相談を受けた平成~年~月~日又はその日以降である。
(2)そのため、原告の被告に対する損害賠償請求権が時効または除斥期間の規定に該当し、請求が認められないということはない。

4 結論
よって、原告は被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、下記の金員の支払いを求める。
(1)過払金元本相当額                 ~円
(2)過払利息相当額(平成~年~月~日まで)   ~円  
(3)過払金元本相当額に対する平成~年~月~日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金

過払い金請求と時効については様々な問題点が存在します。過払い金請求と時効についての詳細は弁護士等の法律の専門家にご相談ください。

Q 過払い金請求権には年5%の利息がつくと聞きましたが、業者がいろいろ言ってくるのですが?

A 当事務所の見解としては、過払い金請求権については、各過払い金の発生時から年5%の利息が付くという見解です。実際、この見解に沿った過払い金請求権についての判例がたくさんあります。

 他方、業者が以下のような主張をしてくることがあります。
(1)過払い金請求権の利息は、訴状送達の日の翌日からのみ発生するとする貸金業者側の主張
(2)過払い金請求権の利息は、最終取引日からのみ発生するとする貸金業者側の主張

以下、このような主張を貸金業者がしてきた場合の反論の主張案を記載します。

第1 5%の利息の起算日について
悪意の受益者の5%の利息の起算日が取引終了時であるとする被告の主張、悪意の受益者の5%の利息の起算日が訴状送達の日の翌日である等の被告の主張は否認ないし争う。
1 過払金は、不当利得金であり、悪意の受益者に運用益がある限り、運用益をも返還すべきものであることは、当然の理である。そして、民法704条が利息の返還を規定しているのは、損失者の側に受益者の実際の運用益に関する立証の負担を課すことなく、少なくとも年5%の利息を付して返還すべきものであるとしたものと解釈できる。そして、同条後段は、損失者が、年5%という受益者の運用益以上の損害を立証したときは、悪意の受益者に当該損害賠償義務を課したのである。
2 このように、過払金返還請求権は法律上の原因なくして利益を受けた場合に法律の規定によって生じる債権であり、悪意の受益者である貸金業者は利益を受けたときから過払金に付する利息を支払うべきである。「請求権の消滅時効の起算点」と「過払利息の始期」は異なるものであって混同されてはならないのである。
3 この点、利息と遅延損害金を混同している議論も存するが、遅延損害金が、期限を徒過した時に発生するのに対して、利息は、債務者の遅滞と関係なく、時の経過によって発生するものであって両者は異なる。そして、民法704条前段が定めているのは「利息」である。例えば、不確定期限ある債権の時効の起算点(権利を行使することができる時)は期限到来時であるが、遅延損害金の発生時(債務者が遅滞に陥る時)は、債務者が期限の到来したことを知った時である。不法行為債権も遅延損害金は不法行為時から発生するが、時効の起算点は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時である。このように、時効の起算点と債務者が遅滞に陥る時とは重なり合うものではない。
4 また、最近の過払金返還請求権についての各種最高裁判例においても、過払金返還請求権が発生していることを前提に「法律上の障害」があるというのであって(請求権が発生していないのであればそもそも法律上の障害を云々するまでもなく消滅時効は進行しない)、各種最高裁判例の原審あるいは原々審のした計算(過払い利息は過払金が生じる毎に生じるものとして計算されている)が是認されていることからも明らかなとおり、過払利息の発生時期を取引終了時等であると考えることはできないのである。
5 以上からすると、悪意の受益者の5%の利息の起算日は、各時点において過払い金が発生した日なのである。

過払い金請求と年5%の利息については、法律上様々な問題点があります。詳細は弁護士等の専門家にご相談下さい。

Q 業者から、取引が2つあって取引が分断するという主張があったのですが?

A 過払い金請求をする際、取引の中断・分断という論点が発生することがあります。これは、一度完済した取引と再度借入した取引が別取引であるとする貸金業者の主張です。この主張に対する裁判所の対応はケースバイケースのところがあります。
 以下、当事務所で使用している主張例を記載します。

第1 個別取引で計算すべきという被告の主張に対する反論
(1)本件金銭消費貸借契約において基本契約が存在すること、(2)本件金銭消費貸借契約は1つの連続した貸付取引であること、(3)本件金銭消費貸借契約は「事実上」1個の連続した貸付取引であること、のいずれかに本件金銭消費貸借契約が該当することからすると、本件金銭消費貸借契約において過払金の額を計算するにあたっては、原告が主張するような一連の計算方法による充当の合意が存在すると言うべきである。そのため、本件取引は一連の取引として計算がなされるべきである。


1 本件金銭消費貸借契約は基本契約がある場合に該当すること(最高裁判所第1小法廷平成18年(受)第1887号・損害賠償等請求事件・平成19年6月7日判決)(主張1)
(1)同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において、借主がそのうちの一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い、この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は、当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り、弁済当時存在する他の借入金債務に充当されると解するのが相当である。これに対して、弁済によって過払金が発生しても、その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には、上記過払金は、その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。しかし、この場合においても、少なくとも、当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは、その合意に従った充当がされるものというべきである。そして、基本契約がある場合には、基本契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。(以上につき、最高裁判所第1小法廷平成18年(受)第1887号・損害賠償等請求事件・平成19年6月7日判決参照)
(2)以上を本件について見ると、本件取引については最初の契約時に契約書・申込書等の書類が作成された以降に具体的な契約書・申込書等の書類が作成・提出された事実について被告からの主張・立証はない。したがって、本件取引はいわゆる基本契約が締結された場合に当たると言える。
(3)とすれば、基本契約がある以上、債務の弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意が原告・被告間にはあるというべきである。そのため、本件取引は一連の取引として計算されるべきである。


2 本件金銭消費貸借契約は1つの連続した貸付取引であること(最高裁判所第1小法廷平成18年(受)第1534号・不当利得返還請求事件・平成19年7月19日判決)(主張2) 
万が一、本件金銭消費貸借契約が基本契約がある場合に該当しないとしても、本件金銭消費貸借契約は1つの連続した貸付取引である。
  (1)金銭消費貸借取引において、(ア)従前の貸付けの切替え及び貸増しとして、長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたこと(イ)取引に空白期間がある場合であっても、前回の返済から期間的に接着し、前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われた場合には、金銭消費貸借契約は1つの連続した貸付取引である。そして、1個の連続した貸付取引においては、当事者は、1つの貸付けを行う際に、切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり、複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である。(以上につき、最高裁判所第1小法廷平成18年(受)第1534号・不当利得返還請求事件・平成19年7月19日判決参照)
(2)以上を本件について見ると、本件取引において取引空白期間は~月に過ぎない。(平成~年~月~日から平成~年~月~日までの間)また、また、平成~年~月~日までの取引と平成~年~月~日以降の取引について、各取引間の条件も特段変更がなされた事実は証拠上は存在しない。
(3)とすれば、本件金銭消費貸借契約が1つの連続した取引である以上、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することの合意があるのである。そのため、本件取引は一連の取引として計算されるべきなのである。
  
3 本件金銭消費貸借契約は事実上1個の連続した貸付取引であること(最高裁判所第二小法廷平成18年(受)第2268号・不当利得返還等請求事件・平成20年1月18日判決)(主張3)
万が一、本件金銭消費貸借契約が基本契約がある場合に該当せず、かつ、本件金銭消費貸借契約は1つの連続した貸付取引にも該当しないとしても、本件金銭消費貸借契約は「事実上」1個の連続した貸付取引である。
(1)同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合において、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときには、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。(以上につき、最高裁判所第二小法廷平成18年(受)第2268号・不当利得返還等請求事件・平成20年1月18日判決) 
(2)そして、具体的な判断基準としては下記の要素を考慮して判断をなすべきである。
(ア)第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が行われた期間の長さ
(イ)第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
(ウ)第1の基本契約についての契約書の返還の有無
(エ)借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
(オ)第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況
(カ)第2の基本契約が締結されるに至る経緯
(キ)第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同
(ク)取扱支店の同一性
(ケ)顧客番号が枝番を含めて同一であったこと
(コ)利率の移動
(以上につき、(ア)から(キ)までは上記最高裁判決参照、(ク)から(コ)までは上記最高裁判決の原審参照。なお、上記要素を考慮して検討する場合には、利息制限法の強行法規性、経済的弱者である借主の権利擁護という社会的要請等の価値判断を十分に反映した判断がなされるべきである。)
(3)以上を本件について検討すると、以下のように本件取引は事実上1個の連続した貸付取引であるとしか考えようがない。 
(ア)第1の基本契約は約1年強であり、第1の基本取引はそれほど短期間であったとは言えない。
(イ)各基本契約間の空白期間は、約6ヶ月と極めて短期間である。
(ウ)第1の基本契約の終了に際して契約書等が返還されたという事実は証拠上は存在しない。
(エ)カードについて第1の基本契約の終了(またはその他の基本契約の終了)に際し失効手続きがとられたという事情は証拠上存在しない。
(オ)第1の基本契約の終了後、第2の基本契約において、貸付の勧誘は被告からなされている。
(カ)第1の基本契約の終了後、第2の基本契約において、被告からの申し出により貸付がなされている。
(キ)各基本契約において、契約条件に変更が生じたというような事情は証拠上存在しない。
(ク)各基本契約において、取扱支店が変更したというような事実は証拠上存在しない。
(ケ)各基本契約において、顧客番号が変更したというような事実は証拠上存在しない。
(コ)各基本契約において、利率が変更されたとの事実は証拠上は存在しない。
(4)以上の点を考慮すると、本件取引は事実上1個の連続した貸付取引である。したがって、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するのである。そのため、本件取引は一連の取引として計算されるべきなのである。


第3 結論
 以上からすると、(1)本件金銭消費貸借契約において基本契約が存在すること、(2)本件金銭消費貸借契約は1つの連続した貸付取引であること、(3)本件金銭消費貸借契約は「事実上」1個の連続した貸付取引であること、のいずれかに本件金銭消費貸借契約は該当する。そのため、本件金銭消費貸借契約において過払金の額を計算するにあたっては、原告が主張するような一連の計算方法による充当の合意が存在すると言うべきである。したがって、本件各取引を一連の取引として本件取引を計算すべきなのである。

過払い金請求と取引の中断・分断については法律上様々な問題点があります。詳細は弁護士等の専門家にご相談下さい。

 ここでは、債務整理の方法のうち、過払い金請求について、特に平成20年前後以降から多く問題となっている論点・問題点等について解説しました。過払い金請求の詳細、債務整理の詳細は弁護士等の専門家にご相談下さい。